住民監査請求結果(平成11年度受付分)

1 都庁勤務職員の勤務時間中における休息時間の割り振りに関する件

請求日 平成11年4月27日
結果通知日 平成11年6月28日

請求人の主張

都庁職員の勤務時間は、午前8時30分から午後5時15分までと決められているが、実態は、A班・B班の時差勤務制により、1日2回15分の休息時間を勤務の始めと終わりに置き、勤務時間を30分短縮している。

このような勤務時間の短縮は勤務時間条例違反であり、違法な給与支出をしているので、その是正を求める。

時差勤務制の概念図

監査結果

理由なし(棄却)

正規の勤務時間の一部である休息時間は、正規の勤務時間4時間につき15分置くこととなっているが、勤務時間のどこに割り振るかは、知事の裁量に委ねられている。

休息時間を勤務時間の始めと終わりに置いても、任命権者の指揮監督権を離れた休息時間の自由な使用を保障したものとはいえず、知事の裁量を逸脱しているとはいえない。

休息時間中に職員が出勤・退庁しているとしても、必要な業務が予測される場合には勤務を命令できること、及び休息時間が職務専念義務を免除された時間であることを勘案すれば、給与を減額しないことは違法とはいえない。

但し、勤務時間の始めと終わりに休息時間を置くことは、「一定期間の勤務を続けた場合の軽い疲労を回復し、公務能率の増進を図る」という休息時間の趣旨からいって適切とはいえないため、休息時間制度の趣旨を踏まえ、改めてそのあり方につき検討するよう、意見を付した。

★その後、本監査結果の意見を受けて、平成12年8月に、都庁職員の勤務時間が改正された(現在試行中)。

改正後の時差勤務制度

監査結果本文を見る(PDF 263KB)

2 都議会議員の海外出張に伴う旅費支出等を違法・不当とする件

請求日 平成11年6月8日
結果通知日 平成11年8月5日

請求人の主張

平成8年7月にローマ、ミュンヘン、ベルリンに出かけた都議会顧問団は、ベルリンでの懇親会経費や、出張期間中のバス代、通訳代の領収書に一部偽造が証明され、残りも偽造の疑いが濃い。

一行の宿泊代は、都の旅費条例に定める額を大きく上回っている。

随行職員4名は、議員数に比して多すぎ、3名分は余分な支出である。また、ミュンヘンは友好都市でも何でもなく、その滞在は観光旅行に過ぎない。

これらのこと等から、10,759,408円が違法・不当な支出となるので、参加議員等への返還請求を行うことを求める。

監査結果

理由あり(勧告)

懇親会経費、バス借り上げ費、通訳雇上費については、領収書の金額が実際の支払額よりも合計342,988円多くなっていることが認められ、適正を欠くといわざるを得ない。

宿泊費について増額調整が行われたことは、本件顧問団が都議会を代表する立場にあること等を考慮すると、妥当性を欠くとはいえない。ただし、資金前渡による受領額と旅行代理店への支払額との間には、520,500円の精算残金が生じていたにもかかわらず、返納額0円で精算をしているのは適正を欠く。

以上について、請求人の主張に理由があると認め、上記合計金額863,488円に年5分の利子相当額を加えた額の補てんについて、平成11年8月11日までに必要な措置を講じるよう、東京都知事に勧告した。

知事が講じた措置(PDF 129KB)

なお、随行職員の数及びミュンヘンを出張先としていることについては、合理性を欠くとはいえないとして、請求人の主張を認めなかった。

監査結果本文を見る(PDF 268KB)

3 都議会都市問題調査団の海外派遣に伴う経費支出に関する件

請求日 平成11年6月30日
結果通知日 平成11年8月25日

請求人の主張

平成7年10月に海外派遣された都議会都市問題調査団の経費支出は、支出命令書に添付された通訳雇上げ料、バス借上料、懇親会費の各領収書の金額が全て前渡受高と一致しており、また、海外での支払いなのに全て円建てになっているのは不自然である。

昼食を招待されているにもかかわらず、日当を全額支払っている日があるが、旅費条例にのっとり、日当を半額にすべきである。

添乗員経費は、ツアー代金に含めて事前払にするのが普通であるにもかかわらず、本件では、ツアー後に別立てで支払っているのはおかしい。

これらのこと等から、10,562,180円が違法・不当な支出となるので、参加議員等への返還請求を行うことを求める。

【都議会都市問題調査団】
都議会都市問題調査団は、諸外国の主要都市における都市問題の実情等を視察・調査し、訪問諸都市との友好交流を図ることを目的として、都議会が、平成7年度まで毎年派遣していたものである。
平成7年度においては、10月17日から31日までの15日間の日程で、下表のとおり、A、B、C、Dの4班に分かれて実施された。

派遣先 参加人数
A班 南欧(リスボン、ローマ等) 議員7名、随行1名、添乗員1名
B班 北欧(ケルン、プラハ等) 議員7名、随行1名、添乗員1名
C班 北米(サンフランシスコ、トロント等) 議員7名、随行1名、添乗員1名
D班 アジア・オセアニア(バンコク、シドニー等) 議員8名、随行1名、添乗員1名
---------- 議員29名、随行4名、添乗員4名

監査結果

理由あり(勧告)

懇親会については、3,161,500円の資金前渡を受け、返納額0円で精算しているにもかかわらず、実際には実施されていなかったことが認められた。なお、精算に用いた領収書は、資金前渡額に合わせて作成されたものであった。

日当については、請求人が指摘した日に加え、もう一日昼食を招待されている日が認められ、計58,450円が返納もれとなっていた。

以上について、請求人の主張に理由があると認め、上記合計金額3,219,950円に年5分の利子相当額を加えた額の補てんについて、平成11年10月31日までに必要な措置を講じるよう、東京都知事に勧告した。

勧告に対する措置結果(PDF 117KB)


なお、通訳雇上費とバス借り上げ費については、ほぼ全行程で通訳を雇い、バスを借り上げていたにもかかわらず、予算が市役所等への公式訪問日の3日分のみであったため、予算額と同額の領収書を作成して精算したことが認められた。このような処理は不適正だが、実支出額は精算額を上回っており、都に損害は生じないので、請求人の主張を認めなかった。
また、添乗員経費については、旅行代理店に別途委託しており、その経費支払いは適正に行われていることが認められた。

監査結果本文を見る(PDF 238KB)

4 清掃事務所等における組合室使用に伴う電気料の徴収に関する件

請求日 平成11年7月9日
結果通知日 平成11年9月3日

請求人の主張

石神井清掃事務所の一部を都清掃局職員組合が使用しているが、電気、ガス、水道、電話、廃棄物処理の経費を支払わせていないのは違法なので、過去1年間の費用を支払わせることを求める。

清掃局の他の清掃事務所等についても同じ問題があるので、同様の措置を求める。

監査結果

理由あり(勧告)

石神井清掃事務所の電気料については、組合事務室内で電気を使用しているにもかかわらず電気料を負担させないのは東京都公有財産規則に反するので、過去1年間の電気料相当分の損害補てんの措置をとるよう勧告した。

勧告に対する措置結果(PDF 149KB)


なお、石神井清掃事務所の組合事務室内には、水道及びガスの設備はなく、電話料については、組合が負担していることが認められた。

廃棄物処理料については、ごみ量の具体的算定が困難で、作成したビラなどの資料の残りは役員が持ち帰るなどごみとして排出しないよう努めていることから、過去にさかのぼって返還を求めるまでの違法性・不当性はないと判断した。

石神井清掃事務所以外の事務所については、具体的な違法・不当事由の指摘がないため監査を実施しなかったが、本件に類する事例があれば同様の措置をとるよう、清掃局に要望した。

監査結果本文を見る(PDF 200KB)

5 杉並中継所の環境調査に関する経費支出を違法・不当とする件

請求日 平成11年10月28日
結果通知日 平成11年12月24日

請求人の主張

平成8年3月に杉並中継所が稼働して以来、いわゆる杉並病の被害者が続出している。

都は、杉並病発生以来、杉並中継所等の環境調査を何回も実施しているが、我々が疑わしいと考えるホッパー近辺、排気塔の真上、地下から地上へ車が出てくる出口、地上の駐車場広場において、調査を一度も行っていない。

したがって、これらの調査は、周辺住民の健康被害と杉並中継所が無関係であることを証明するために行われた違法・不当なものといえるので、平成8年度から環境調査のために支出した29,400,0000円の返還及び支出差止を求める。

【杉並中継所の概要】

施設の性格  小型収集車で集めた不燃ごみを約2分の1に圧縮し、大型コンテナに積み替えて中間処理施設へ輸送する中継施設。
 通産省機械技術研究所跡地の一部を利用し、杉並区立井草森公園に隣接して建設。中継所上部は公園の一部として開放している。
所在地 杉並区井草4-15-18
延べ床面積 6,890.31㎡
構造 管理棟:鉄筋コンクリート造、地上1階・地下1階
中継棟:プレストレストコンクリート造、地上1階・地下2階
主な設備等 ホッパー3基、コンパクター3基、コンテナ移動装置、集じん装置、脱臭装置、排水処理装置、エアカーテン、排気塔、換気塔
開設年月日 平成8年4月1日
中継規模 一日180トン(最大270トン)の不燃ごみを中継

監査結果

理由なし(棄却)

本件環境調査においては、排気塔下部の点検口及び換気塔から空気を採取しており、また、敷地境界や周辺地点等において、排気拡散後の影響を調査している。これらは、杉並中継所の排気が外部環境に与える影響を調査するものであり、妥当性がある。

請求人が測定の必要性を主張する地点のうち、ホッパー近辺、車の出口及び駐車場近辺については、中継所の排気の影響を直接受ける場所とはいえない。排気塔の真上については、排気塔下部の点検口と同様の空気であるため、その採取は必要不可欠ではない。

監査結果本文を見る(PDF 198KB)

6 柳泉園組合への補助金支出に関する件

請求日 平成12年3月2日
結果通知日 平成12年4月28日

請求人の主張

柳泉園組合は、ごみ処理施設建設に関し、東京都から平成10年度分の補助金1億7,494万5千円を受けているが、10年度末及び11年度当初において、10年度事業計画に書かれた多くの工事が未着工であった。

都補助の実績報告書に添付された写真の殆どは、10年度に施工する計画の燃焼設備、燃焼ガス冷却設備などの機械部品の写真であり、これらの諸設備は、柳泉園敷地内では施工されていなかったといえる。

以上のように、柳泉園組合は、行ってもいない工事を行ったと偽り、住友重機に公金を違法に支出し、都の補助金を詐取した。柳泉園組合のこれらの違法な支払いに補助金を交付した東京都の行為に対し、監査請求する。

【柳泉園組合の概要】

組合の性格 西東京市、東久留米市、清瀬市の3市を構成市とする一部事務組合
(監査請求当時、西東京市は保谷市と田無市に分かれていた。)
設立目的 (1)ごみ処理施設及びし尿処理施設の設置・運営
(2)処理施設から最終処分場までの廃棄物の運搬
(3)組合所有地内における福祉増進施設の設置・運営
設立年月日 昭和35年9月30日
所在地 東久留米市下里4-3-10
運営施設 ごみ処理施設、し尿処理施設、粗大ごみ処理施設、リサイクルセンター
野球場、テニスコート、プール、トレーニング施設、スポーツサウナ
本件請求の対象施設 名称:クリーンポート
処理能力:315トン/日(105トン/日×3基)
工事期間:平成9年9月~平成13年12月
 ・平成12年7月に試験稼働
 ・平成12年11月から本格稼働
 ・外構工事などは平成13年度まで継続

監査結果

理由なし(棄却)

ごみ処理施設のような大型プラントを構成する各機器は、本体への据え付け前に各専門工場で製造され、製造が完了したものについては、部分払いが行われるのが通常である。このように建設現場以外で行われる設備工事についても、既済部分として部分払いが行われれば、補助金の交付対象とすることができる。

請求人が問題としている設備工事は、、各設備機器の製造工場で施工・完了しており、既済部分として部分払いの対象となっていることが認められるので、これを補助対象としたことに違法・不当はない。

監査結果本文を見る(PDF 230KB)

7 片浜養護学校における休職職員に対する給与支給に関する件

請求日 平成12年3月28日
結果通知日 平成12年5月26日

請求人の主張

都立片浜養護学校の事務職員の病気休職には、休職の際に都が指定する医師の診断書を受けていないなど、その手続等に問題がある。

したがって、病気休職期間中に職員に対してなされた給与支出は、違法・不当な公金支出である。

監査結果

理由なし(棄却)

本件休職処分には、休職措置の必要性が認められ、各種手続も適正になされていると認められた。

医師の診断については、現に治療を受けている医師の診断書が、指定医師の診断書に代わるものとして認められており、本件においても、職員が治療を受けていた医師の診断書が休職手続の際に提出されていた。

監査結果本文を見る(PDF 30KB)

8 都費負担の区立小中学校事務職員の休憩時間の設定を違法・不当とする件

請求日 平成12年3月31日
結果通知日 平成12年5月26日

請求人の主張

世田谷区など都内6区の区立小中学校の教員は、「給食指導」として昼食を生徒と食べるため、休憩時間を夕方にとっているが、給食指導のない事務職員までもが、教員と同様夕方に休憩時間をとっている。 事務職員は、昼に昼食を食べているが、いくら早く食べても15分はかかる。すなわち、事務職員は、昼の15分と夕方の45分をあわせて1時間の休憩時間をとっていることとなり、勤務時間条例に違反している。

そこで、速やかに勤務時間中の違法な昼食時間「15分」を改善するとともに、過去1年間にさかのぼり、違法に支払われた給与の損害補てんを求める。

監査結果

理由なし(棄却)

事務職員は、教員と異なり、昼食をとること自体は勤務とはいえない。したがって、休憩時間を夕方に置き、勤務時間内に昼食をとるような勤務時間の設定は、問題があるといわざるをえない。

しかしながら、区立学校事務職員の給与は東京都が支出しているものの、勤務時間の割り振り権限は各学校長にあるので、東京都がこれを直接改善することはできない。

また、事務職員は、職務の必要があれば昼食を中断して対応することが求められており、こうした昼食時間の特性を考慮すれば、過去にさかのぼって損害補てんを求めるまでの違法性・不当性はないと考えられる。

ただし、本件6区の区立小中学校のうち、勤務時間内に昼食をとらざるを得ないような勤務時間の割り振りを行っているものに対しては、給与支出権者として是正に向けた適切な指導等を行うよう、教育庁に対し要望した。

学校事務職員勤務時間概念図

監査結果本文を見る(PDF 201KB)