令和5年第一回都議会定例会 監査委員報告について

令和5年2月15日の第一回都議会定例会において、監査委員を代表して、 伊藤ゆう委員が、定例監査、工事監査 、財政援助団体等監査など、過去1年間の監査結果を報告しましたのでお知らせします。

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令和5年第一回都議会定例会 監査委員報告(全文)

 監査委員を代表いたしまして、令和4年1月から12月までの1年間に実施した監査の結果について、御報告申し上げます。

 監査委員の責務は、都の行財政が公正かつ効率的に運営されるよう、各局の事務・事業を監査し、都民の信頼を確保していくことです。
 令和4年は、新型コロナウイルスの感染が長期化する中、オンライン会議を活用するなど、業務の効率化を図りながら、監査の質を落とすことなく、必要な監査を行いました。
 その結果、この1年間に都庁や事業所の550か所で監査を実施し、222件の指摘及び意見・要望を行い、総指摘金額は 約52億7千万円でした。このうち、経費削減が可能なものや収入漏れなどは約5千万円でした。
 続いて、各々の監査の概況について申し上げます。

 第一に、定例監査について申し上げます。
 定例監査は、都の行財政全般を対象とした最も基本的な監査です。
 令和4年は、令和3年に引き続き、「新型コロナウイルス感染症対策事業」を重点監査事項とし、各局の感染症対策事業や、感染症により休止、縮小又は延期などの影響を受けた事業等の事務処理等について、検証するとともに、例年通り、各局の事務・事業全般に関して監査を実施しました。
 その結果、重点監査事項に関しては、乗合バス車内の感染症対策に係る整備事業補助金において、補助対象経費の確認に必要な資料を、十分に確認しないまま交付決定を行っていたなどの事例について、事務手続きを適正・適切に行うよう求めたものなど8件、そのほかの事項に関しては、単価契約工事について適正に実施することを求めたものなど87件の、合計95件の指摘及び意見・要望を行いました。  

 第二に、工事監査について申し上げます。
 工事監査は、都が実施した工事等について、技術面から検証する監査です。
 令和4年は、各局の事業が所期の目的を達成し、また効果を発揮する工事となっているかという「設計条件」の検証を重点監査事項として設定し、監査を行いました。
 その結果、大きいマンホールの開口部の設計において、手引きに基づいた構造計算を行っておらず、安全性が確保されていなかったため、構造計算を適正に行うよう求めたものなど、全体として28件の指摘及び意見・要望を行いました。  

 第三に、財政援助団体等監査について申し上げます。
 財政援助団体等監査は、都が出資や補助金の交付等を行っている団体や公の施設の指定管理者を対象とする監査です。
 本監査については、新型コロナウイルス感染症の影響により、令和2年は実施を見送り、令和3年は規模を縮小しての実施となりましたが、令和4年は、感染拡大前と概ね同水準の規模となるよう対象団体を選定し、監査を実施しました。
 監査の結果、保育施設に対する補助金が過大に交付されていた事例など、58件の指摘及び意見・要望を行いました。

 第四に、行政監査について申し上げます。
 行政監査は、特定の事務や事業を対象として行う監査です。
 令和4年は、令和3年に引き続き「新型コロナウイルス感染症対策事業」を監査のテーマとして設定し、感染者の発見、隔離、治療等に係る事務・事業や、感染拡大防止事業のうち補助金・協力金等に係る事業について、検証を行いました。
 その結果、事業者に対する協力金等の支給に係る業務委託や、宿泊療養施設の一般廃棄物収集運搬委託などにおいて11件の指摘を行ったほか、各種事業を概観し、必要な考察を述べました。
 保健所業務においては、感染拡大により、業務がひっ迫したことから、体制強化や業務の効率化が図られたところです。今後は、保健所と市町村、医療機関等との役割分担、役割分担を踏まえた都の保健所と特別区、八王子市、町田市の保健所との情報共有や連携強化の仕組みの構築、各種システム間の更なる連携や広く利用されているSNS、様々なデバイスの活用など、業務の効率化を図るDXの推進について、検討を進めることが求められます。
 また、協力金等の支給事業においては、重複申請や不正受給などの問題が発生したことから、審査方法の見直しや体制の強化など、問題の解消に努めたところです。今後は、適切な債権管理を行うとともに、同様の事態が将来発生することに備え、より迅速かつ適正な支給を目指し、一連の業務について検証し、改善につなげることが必要です。その際、今回の支給事業によって蓄積された大量のデータの分析・活用なども視野に入れることが求められます。
 新型コロナウイルス感染症については、感染症法上の分類の変更がなされるなど、今後、対策事業の動向に変化が生じることが予想されます。しかし、都は、都民の不安や医療現場等の混乱を招かないよう、引き続き必要な施策を展開するとともに、今後、新たな感染症が発生しても十分対抗できる「感染症に強いまち」を目指し、今まで培ってきた経験と知見を十分に生かし、都民の生命と健康を守り、都民と事業者の生活と事業活動を支えていくために、不断の努力を続けていくことが求められます。

 第五に、決算審査等について申し上げます。
 令和3年度の決算について、数値の正確性や予算執行の適正性などを審査した結果、会計処理及び財産に関する調書の計数の一部誤りや決算書類の作成について是正・改善を要する事項など、30件の指摘を行いました。
 また、地方公共団体の財政の健全化に関する法律に基づいて算定・公表が義務付けられている、健全化判断比率及び公営企業など12会計の資金不足比率の審査も行いました。その結果、健全化判断比率については、いずれも国が定めた基準値を大きく下回っており、全ての会計で実質赤字や資金不足等は生じていないなど、都の財政状況は健全な状態であることが確認できました。

 第六に、内部統制評価報告書審査について申し上げます。
 知事が作成した内部統制評価報告書について、監査で得られた知見に基づき、内部統制の評価手続き及び重大な不備に当たるかどうかの判断が適切に行われているか審査を行いました。その結果、知事による評価が評価手続きに沿って行われており、評価結果に係る記載は相当であることが認められました。

 第七に、監査結果に対する措置状況について申し上げます。
 監査は、指摘した問題点が改善されて、初めて効果を発揮します。そこで、監査の実効性を担保するため、年2回、知事等関係機関から指摘や意見・要望の改善状況の通知を受け、その内容を確認しています。
 過去3年間に行った指摘や意見・要望については、91.4パーセントの案件が改善済となりました。改善に至っていない案件については、その理由や進捗状況の確認を行うなどして、早期の改善を促しております。
 改善事例の一例を申し上げます。工事現場等へ工具・材料等を運搬するため、運転手付き小型貨物自動車の供給を受ける契約を締結していた事例では、本契約による貨物自動車で工具・材料等を運搬し、職員は別途庁有車で工事現場へ移動しておりました。監査結果を踏まえ、庁有車として工具・材料等を運搬できる小型貨物自動車を配備したことにより、当該契約が不要となるとともに、経済的かつ効率的な運搬や職員の移動が可能となりました。

 最後に、住民監査請求について申し上げます。
 令和4年は、8件の住民監査請求がありました。このうち1件については請求の要件を備えたものとして監査を実施し、対象局に勧告を行いました。

 以上、この1年間に実施した監査等について述べてまいりましたが、各種監査の指摘には、類似する事務の誤りが複数の職場で多く発生していることや、例年繰り返し発生している状況が見受けられます。
 各局長及び管理者においては、監査結果を踏まえ、組織の責任者として先頭に立ち、事務におけるリスクを改めて評価・分析した上で、適切な内部統制の構築と運用に取り組むことにより、事務処理の適正化を図り、都民サービスの一層の向上に努められるよう望みます。
 都政が様々な課題に直面し、解決に向け取り組む中、令和5年は、都政の重要課題の中から時宜に適ったテーマを選定し、都民の視点に立った質の高い監査を効果的・効率的に実施してまいります。
 今後とも、都政の公正かつ効率的な運営のため、監査委員の使命を全力で果たし、都民の信頼と期待に応えていく決意であることを申し上げ、報告を終わります。