平成20年工事監査報告書

東京都監査委員は、本日の平成21年第一回都議会定例会に、「平成20年工事監査報告書」を提出しました。

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監査の概要

都が平成19年度に締結した100万円以上の工事等1万5,408件(約1兆4億円)のうち、1割強に当たる1,860件(約3,480億円)を抽出し、計画、設計、積算、施工などについて技術的な面等から監査を実施しました。

【監査の結果】
合計13局に対して、35件の指摘、3件の意見・要望を行いました。指摘した金額の合計は、約1億7,161万円となっています。

【重点監査事項「設計変更」】
監査した全案件について、設計変更が行われている場合、その設計変更の必要性の有無、変更金額の算定や変更手続きは適切に行われているか等について、検証しました。

その結果、指摘件数は7件で、変更金額の算定に当たり、積算システムへの数量の入力を誤ったものや契約変更手続きを適切に行っていないもの等が見受けられました。

【まとめ】
今後は、都市機能の更新を効果的、効率的に進めるため、都庁全体の技術力の維持・向上と、工事事務の誤りの対策強化に向けた取組が必要です。

そのため、各局において、

  • コスト意識の向上や、チェック体制の強化を図ること
  • 知識や経験が十分でない若手職員等への支援体制の整備など再発防止に向け組織を挙げた取組をすること

などを求めました。

主な事例(要旨)

設計

(1)東京都建設リサイクル推進計画・同ガイドラインに基づく再生資源の利用促進を適切に行うよう検討すべきもの

都は、環境に与える負荷の軽減とともに、東京の持続ある発展を目指すために、「東京都建設リサイクル推進計画・同ガイドライン」を定めている。

公共工事の実施に当たっては、環境への負荷が少ない再生資源の利用に努めることとしており、舗装の路盤材については、再生路盤材を調達すべき特別品目として定めている。

しかし、武蔵野の森公園内の園路舗装工事の際、再生路盤材を使用せず新材の粒度調整砕石を用いて施工しており、本ガイドラインで定められている再生資源材を使用していないことは、環境への負荷軽減を図るうえで、適切でない。

【意見・要望事項】 建設局 (報告書本文11ページ)

(2)施設照明設備についてライフサイクルコストを考慮し検討すべきもの

都立調布養護学校校舎増築電気設備工事において、特別仕様の蛍光灯照明(昇降装置付)を取り付けているが、同照明は電極放電を利用した発光方式のため、電極が消耗し球切れが生じる。

そのため、ランプ交換をする必要が生じ、ランプの消費や廃棄物の処理、また交換のための昇降装置が必要となる。

仮に、消耗する電極のない無電極放電灯照明を使用すれば、ランプ交換や昇降装置の必要はなく、ランプ交換費用及び設置費用約231万円が縮減でき、また、廃棄物の縮減にもつながる。

【意見・要望事項】 教育庁 (報告書本文12ページ)

蛍光灯

蛍光灯(現行)

電極間の放電で発光させる。 電極の消耗により球切れが生じ、交換が必要となる。

無電極灯

電磁誘導で発光させる。 消耗する電極がないため、球切れによる交換が生じない。

積算

(3)舗装こわし工の単価設定について検討すべきもの

配水小管布設替工事において、小型掘削機(バックホウ)による厚さ5cm以下の舗装こわし工について見たところ、水道局の積算基準では、10cm以下は一律の単価として定めており、この単価を用いて積算している。

しかし、建設局の積算基準では、同機械を使用した場合の厚さ5cm以下の舗装こわし工の単価が設定されており、仮にこの単価を準用すれば、積算額約1,016万円の縮減が可能であり、今後の工事においても同様の効果が得られる。

【意見・要望事項】 水道局 (報告書本文16ページ)

建設機械

(4)防水工事におけるシリコンシートの積算を適正に行うべきもの

平成18年度東京国際展示場(東京ビッグサイト)会議棟屋根ほか防水補修工事において、東展示棟ガラス屋根のサッシュ枠の防水補修の積算について見ると、本防水補修工事のシリコンシートの数量は約3,500mであるにもかかわらず、約7,100mで積算を行っている。

これは、誤って本工事施工範囲を超えた数量で積算してしまったものである。

このため、積算額約1,680万円が過大なものとなっている。

【指摘事項】 産業労働局 (報告書本文11ページ)

施工

(5)高所作業における安全性を高めるため、手すりの先行工法による枠組足場を適正に行うべきもの

局の工事では、高所作業における安全対策の一環として、軒の高さ10m未満の木造家屋等低層住宅建築工事を除き、枠組足場を設置する場合は、手すり先行方法を採用することとしている。

しかし、金町浄水場薬品注入所外壁補修工事の施工について見ると、足場の高さが14mになるにもかかわらず、手すり先行工法による枠組足場で行われていない。

このことは、高所作業の安全性を確保するうえから、適正でない。

【指摘事項】 水道局 (報告書本文26ページ)

手すり先行無し(指摘)

手すり先行有り(適正)


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